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「噛み合わせ」に正解はない?多様な理論と向き合う新しい視点

2025年1月2日 大名歯科院長
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一般的に「噛み合わせ」と呼ばれるものは、専門用語では「咬合(こうごう)」といいます。歯科医や患者が「噛み合わせが良い」「噛み合わせが悪い」とよく話題にしますが、実は咬合に関する学問である「咬合学」には様々な流派や考え方があり、これが絶対的に正しいという統一された理論は存在しません。

多くの場合、歯科医や患者はある咬合理論を臨床で試し、たまたま治療がうまくいけば「この理論が正しい」と思い込み、逆に結果が良くなければ「この理論は間違っている」と否定してしまいます。実際には、咬合理論は患者ごとの相性や状況、さらには治療を行う側の感覚に大きく影響される分野であり、ひとつの理論に固執しないことが重要です。

さらに、咬合は時間とともに変化していきます。仮に「完璧な咬合治療」が存在したとしても、その状態が永続することはありません。著名な歯科医である木野孔司先生の研究によると、正常な人で上下の歯が接触している時間は1日わずか10~20分程度とのことです。この短い時間のために複雑な咬合理論を追い求めるよりも、上下の歯が不要に接触する癖(TCH:Tooth Contacting Habit)を防ぐことの方が、むしろ重要だと言えるでしょう。

また、残りの98%の時間は、歯が接触していない状態です。この時間帯において、食事や会話に支障がなければ、多少の噛み合わせのズレや歯並びの不具合があったとしても、過剰に気にする必要はありません。患者も歯科医も「機能的で審美的に問題がなければ、それで十分」という視点を持つことで、治療に対する負担を軽減できるのではないでしょうか。

咬合において「絶対の正解」を求めるのではなく、柔軟な考え方を持つことが、より良い治療やケアにつながるのです。


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