医者の本音:言えない言葉、伝えたい気持ち
「必ず治りますから」。
医師からこう言われたら、多くの人は安心し、心が軽くなるでしょう。実際、中国新聞デジタルのアンケートでも、患者が「医者から言われてうれしい言葉」のひとつに挙げられています。しかし、現実には「必ず」という言葉を医療現場で使うことは難しいのです。なぜなら、医療には不確定要素が多く、どんなに慎重に治療を進めても、結果を100%保証することはできないからです。
同様に、「痛くないですよ」「噛めるようになります」「この治療で一生もちます」といった言葉も、患者を喜ばせる一方で、過度な期待を抱かせる可能性があります。医師としては、患者の不安を和らげたい気持ちはありますが、誠実さを欠くような発言には慎重にならざるを得ません。
例えば、歯科治療を受けた患者が「これで一生歯を守れますね」と期待を込めて尋ねることがあります。医師としては「適切なケアを続ければ長持ちします」と答えるのが精一杯。正直な説明をすることで、患者が自分の健康に主体的に向き合うきっかけになるかもしれません。
一方で、こんな質問をされることもあります。「ほっといて大丈夫ですか?」。
治療の緊急性がない場合、医師は「今すぐ治療する必要はありませんよ」と説明します。しかし、それを聞いた患者の心に新たな不安が芽生えることがあります。このようなとき、医師が伝えたいのは「何もしなくて良い」という意味ではなく、状況に応じた適切な対応が必要だということです。
たとえば、「虫歯が進行していないので、今は特に治療は必要ありません」と言った場合でも、「ただし、定期的なチェックは欠かさないようにしてください」と補足します。治療を後回しにする判断は、患者自身の行動次第で良い方向にも悪い方向にも変わります。
医療の現場では、時に患者の期待に応えることと、現実を正直に伝えることの間で葛藤が生まれます。それでも医師たちは、「患者が安心できる言葉」と「正確な情報提供」のバランスを大切にしながら、日々の診療にあたっているのです。
1. 「先生、本当に治るんですか?」
→ 「治療の効果が期待できますが、経過観察が必要です」と丁寧に伝える。
2. 「痛くないって言ってたのに…」
→ 「できる限り痛みを抑える治療をしますが、完全にゼロにするのは難しい場合があります」と説明。
3. 「このまま様子見で大丈夫?」
→ 「症状が進まないように経過観察が重要です。一緒に確認していきましょう」と安心感を与える。
患者との信頼関係を築くために、正直で思いやりのある言葉を選ぶことが、医療者に求められる大切なスキルと言えるでしょう。
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- 大名 幸一 Koichi Omyo
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